研究科長・学部長からのメッセージ

人文社会学部・人間文化研究科への招待

大学院人間文化研究科長・人文社会学部長 別所 良美 

 

新入生の皆さん、ご入学おめでとう。入学にあたり皆さんが抱いている期待を実現しアクティブな学生生活が送れるよう、人文社会学部の教職員はサポートしたいと考えています。

新入生の皆さんは、大学生活に夢と希望を抱きながらも、大学という未知の世界へ入ることに不安を感じていると思います。ゆえなきことではありません。ドイツ語を持ち出せば、大学は、小中高校のように”lernen”(学習)するところではなく、”studieren”(研究・主体的探求)をすることろです。「自由」が与えられる代わりに、主体的な参加と努力がなければ、何も得られません。講義、ゼミ、調査・フィールド、ワークなどの実習などに自分から問題意識をもって参加してください。また、狭い意味での勉学だけでなく、クラブ・サークルなど課外活動、NPO・NGOやボランティアなどの社会的活動、国内外の旅を通して多様な文化・生活に接する体験、小説・美術やドキュメンタリーに親しむ等々、多面的な活動に自ら進んで取り組むことが、豊かで楽しい学生生活に欠かせません。

さて、人文社会学部は、「人間・社会・文化のあり方を学際的な視点から問い直し、ウェルビーイングwell-being (豊かで人間らしい生き方)を可能にする社会の実現への貢献」という目標を1996年の学部創設時に掲げました。そして、well-beingという理念を21世紀の課題に対応して現代的に発展させるため、国連の「持続可能な開発のための教育(ESD: Education for Sustainable Development )」という考えを取り入れ、人文社会学部の教育研究を新たな次元へとヴァージョン・アップさせる取り組みを私たちは行っています。

「持続可能な開発Sustainable Development」とは人類全体に突きつけられている巨大な問題ですが、それは同時に、「開発・発展」を物質的な富の増大ではなく、「人間的な豊かさ」の広がりと共有だと捉え直すというシンプルな問題でもあります。この問題に真剣に向き合うために必要なことは、一人ひとりの人間の差異を豊かさとして大切に育てることを学び、地域社会における人々の協働と助け合いの現場に自ら参加し、さらに身の回りのローカルな生活へ向けるまなざしで国境の向こうの人々の生活を見つめる真にグローバルな視点を獲得することなのです。私たちにとってESDとは、「豊かで人間らしい生き方のための持続可能な地域社会と地球社会をつくるための教育Education for Sustainable Development of human well-being in glocal [global & local] societies」なのです。人文社会学部の三学科、人間科学科、現代社会学科、国際文化学科は、そのような認識をみなさんとともに培ってゆく場なのです。

そのために私たちは、課題志向型の学際的・複合的な研究教育を追求し組織しようと努めてきました。人文社会学部には人文社会系の多様な教員が結集し、学際的な教育研究を展開できる条件が整えられています。こうした特徴を生かして、学部学生には、各分野の専門的知見を学ぶとともに、学科の枠にとらわれることなく、私たちが直面する現実の諸問題を総合的・学際的に把握する能力を培うことを期待するものです。

大学院人間文化研究科長・人文社会学部長

大学は、出来合いの知識を教員が授け、学生が覚え込む場ではありません。大学とは本来、これまでは見えなかったものが、教員からの知識を刺激として、見えるようになり、もっと深く見たい研究したいと学生自身が覚醒してゆく場なのです。そのためには学生自身が知識を刺激として受け取る能動性と努力が必要です。能動的学習が最も必要とされるのが演習(ゼミ)と卒業論文でしょう。ゼミ・卒論に積極的に取り組み、自ら調べあげたものを報告し、議論を交わす、こうした大学らしい活動を通じて、柔軟な発想力、論理的な思考力や分析能力、そして、コミュニケーション能力を培って欲しいと考えています。

意欲と希望にあふれた学生の皆さんとともに、新しい時代に応える知の創出と持続可能な地域社会・地球社会の担い手の形成に努めていきたいと思います。

学部の理念と教育の目的

人材の養成に関する目的

  • 人類の豊かな未来を求めて人文科学・社会科学の諸分野について学び、今日の人間、社会、文化に関わる課題について研究して、それを社会に役立てる人材
  • 現代の地域社会や国際社会が直面する複雑な諸問題を多面的に考察し、実践的に解決していく知を身につけた人材
  • 少人数教育の演習・論文指導によって、発表・討論能力や構想力・文章表現力を身につけた人材