2006年度  ヨーロッパの思想T European Philosophy I


担当:  別所 良美

2006年前期(講義:2単位)

履修学科・学年  国際文化  2年 


科目概要

 過去の克服の問題を取り上げる。戦後ドイツにおいて行われてきた「過去の克服」がどのようなものであったのか、その積極的側面と否定的側面を考察する。「克服」の対象とされる「ナチス犯罪」とは何であり、それに対して戦後ドイツがどのように対応したのか。ドイツの「過去の克服」は一般的には肯定的に評価されながら、80年代半ばから90年代において「過去」に関するさまざまな問題が発生したのは何故なのかについて考えてみたい。さらにドイツと比較して日本における「過去の克服」をどう評価し、また将来のあるべき姿についても議論してみたい。
授業計画


1 
克服去るべき「過去」:ナチズムとホロコースト

2 戦後初期のドイツ

3 60年代・70年代における「過去」との直面

4 80年代の「歴史化論争」とその後

5 ドイツと日本との比較

6 まとめ

レポート資料
(1)中間レポート
 1.ヤスパース(1946)『戦争の罪を問う』(『責罪論』)
 2.西尾幹二(1993)「人間の罪は区別できるのか」
 課題:ヤスパースにおける「罪の区別」は、ドイツ人の「集団の罪」を回避するための詭弁なのか?「政治上の罪」およびそこから帰結する「集団の責務」をどのように評価すればよいか。これらの点に注意して、上記の二つの資料を読み、自分の主張を述べなさい。分量はA4レポート用紙2枚以上3枚までを目安とする。
 レポートはワード文書(またはテキストファイル)としてメールに添付して次のアドレスに送ること。
 締め切りは6月24日(土曜)まで。
 また6月26日(月)の授業のときに自分のレポートを印刷して持参すること。

(2)期末レポート

1: ヴァイツゼッカー大統領演説
2: ノルテ「過ぎ去ろうとしない過去」
3: ハーバーマス「歴史の公的使用」

レポート課題: 
 ヴァイツゼッカー大統領の演説は〈過去を直視し続ける〉道徳的態度に終わるのではなく、〈未来〉のドイツ人アイデンティティを創りだそうというものである。しかしその課題は大統領の演説で達成されるわけではなく、「歴史家論争」に現れたように、「過ぎ去ろうとしない過去」の重圧と不快が生み出す思想的問題は錯綜している。この論争に対してハーバーマスが提示した立場についてあなたはどのように考えるか、A4レポート用紙2枚以上3枚までを目安として、述べよ。
 レポートはワード文書(またはテキストファイル)としてメールに添付して次のアドレスに送ること。
  bessho@hum.nagoya-cu.ac.jp
 締め切りは8月11日(土曜)まで。


評価の方法

レポート      指定テーマについてのレポート。
 第1回目 6月下旬提出。
  30点
 第2回目 8月初旬提出。 40点

平常点          出席および授業への参加       30点

文献案内


石田勇治
(2002) 『過去の克服:ヒトラー後のドイツ』白水社

Piper[](1995)『過ぎ去ろうとしない過去:ナチズムとドイツ歴史家論争』(徳永恂、清水多吉、三島憲一訳)人文書院

その他の文献については授業中に指示する。